EDIXは「教育ICTの博物館」中学生が探究学習・キャリア教育の一環で来場 花園中学高等学校


(EDIX関西2024入口にて 花園中学高等学校ディスカバリーコースの生徒たちと伏木陽介先生)

EDIX(教育総合展)は、教育分野の最先端技術やサービスが一堂に会する展示会として、多くの教育関係者が教育の最新動向や事例を求めて来場しています。また、近年は小学校や中学校、高校からも、探究学習やキャリア教育の一環として見学希望の声が多く寄せられています。これは、社会と接点を持つ学びが重視され、実践的な教育の場を求める動きが広がっていることと考えられます。

2024年10月に開催されたEDIX関西では、学校法人 花園学園 花園中学高等学校(京都市)(以下 花園学園)ディスカバリーコースの一貫3年生(中学3年生)13名が、探究学習・キャリア教育の一環で来場されました。EDIX関西への参加目的や学びの内容について、同校ディスカバリーコース統括の伏木陽介先生に伺いました。



花園学園のディスカバリーコースについて

─花園学園のディスカバリーコースについて教えてください。

伏木:ディスカバリーコースは、本校独自の探究型学習「ディスカバリープログラム」により、知的好奇心を最大限に高め、将来の自分をデザインする学習を行うコースです。最先端のICT技術を用いた学びや産学連携の課題解決型学習、実際に体験し本物を学ぶフィールドワークを通して、具体的なキャリアデザインを描きながら、自分らしい未来を切り拓く力を育みます。

2016年に設置し、2025年度で10期生を迎えます。1学年で約40名、1年生(中学1年生)から6年生(高校3年生)まで、総勢約220名がディスカバリーコースで最先端の探究と学びに取り組んでいます。

(花園中学高等学校 ディスカバリーコース統括 伏木陽介先生)


EDIXの参加目的

─今回、「EDIXに行こう」となったきっかけや目的は?

伏木:ディスカバリーコースでは、2年生になるとGoogle社やソフトバンク社などの本社へ訪問し、社員の方によるワークショップを受けながら、職業現場で働く価値について考えていきます。今回参加した一貫3年生の生徒たちは、3年生で1年間をかけて行う企業との連携探究プログラム「企業ミッション」において、複数の企業からGoogle社を選択し、学びを進めています。

EDIX参加のきっかけは、「企業ミッション」の伴走担当を務めてくださっているGoogle社の塙真知恵さんがEDIX関西で「Google for Education が考える教育の未来」をテーマに講演することを知ったことでした。


また、今年度の生徒の探究テーマがGeminiなどの「生成AI」だったため、EDIXを通じて幅広い取り組みを知ることも目的の1つとなりました。さらに、本校では、企業の方のご講演をいただいたり、様々な大人とのふれあいを通して、働くことの意義や未来の仕事について考える活動も精力的に行っており、多くの大人が「本物の取り組み」をされているEDIXを訪問することで、新しい価値を創造すべく活動されている方々の生の姿を見ることも狙いの一つとして訪問を行いました。

(Google社 塙真知恵氏と記念撮影)

─最近、多くの学校から、生徒のEDIX参加についての問合せがあります。花園学園ではEDIXへの参加にあたり、保護者へどのように説明されたのでしょうか?

伏木:企業ミッションに関する授業では、生徒たちが各自の探究分野に合わせて、研究所や大学など、学外のさまざまな機関と自主的に繋がりながら進めていきます。EDIXもそうした取り組みの一環として、生徒自身が興味を示し、教師に参加を提案し、自らアポイントメントを取っていきました。

保護者には、探究活動で学外の方にインタビューを行ったり、フィールドワークに行ったりする際と同様のプロットで説明をし、同意書をいただきました。そのため、自然な流れで手続きを進めることができました。


EDIX参加前の準備

─EDIXに参加する前はどのような準備を行いましたか?

伏木:EDIXとはどのようなイベントで、どのようなミッションを持っているかについて、私から生徒たちに詳細にレクチャーしました。また、生徒自身がEDIXのホームページなどを活用し、出展企業を調べて、当日の訪問計画を立てました。また、Google社との探究活動の一環として、生成AIの視点からEDIXの内容や出展企業の取り組みを分析しました。


EDIXに参加した生徒の様子

─当日の行動について教えてください。

伏木:当初、会場では生徒の行動はあまり制限せず、ある程度に自由に動いてもらおうと考えていました。しかし、いざ当日を迎えてみると、出展ブースの企業担当者は主に学校関係者への説明・案内を目的としているため、中学生が訪れた際にどのように対応するか戸惑う可能性があると判断し、結果的にほとんどのグループに教員が同行し、適宜、生徒のフォローを行いました。

(EDIX関西2024で講演の聴講や最先端の教育を体験)

─生徒からはどのような声があがりましたか?

伏木:EDIX終了後、生徒たちは出展企業のホームページを確認し、さらに理解を深めたうえで、「学校にこういうものがあったら授業がより良くなる」といった具体的な提案を生徒自身がしてくれるようになりました。

これは、学校という生徒にとっての生活の場にICTを活用し、いかにウェルビーイングを高めていけるかを生徒自身が有機的に考えられるようになったということです。また、Google社の講演を聞いたことで、「日本全国で授業をより良くしようと頑張っている先生がいることを知った」といった感想も寄せられました。


生徒たちが考える生成AIとは

─生成AIについては、どうでしょうか。

伏木:生成AIに関しては、社会的思考力・判断力の発達段階にある中学生において、思考力の低下や、依存による創造力や問題解決能力の発達の妨げといったリスクも考えられるため、使い方もやや限定的なことが多かったですが、EDIXを通じて、多くの生徒がよく学び、理解したことで、もう一歩先の活用も進んでいく可能性があります。

生徒たちにとって、今まではどこか他人事で不透明な印象もあった生成AIですが、EDIXを通じて「それぞれの学校が課題をもち、それを解決するために技術として生成AIを使っている」という意識が芽生え、探究活動をより自分事として考えられるようになったと思います。こうしたマインドの変化は通常の授業ではなかなか教えられないことで、生徒たちにとって素晴らしい体験でした。

(EDIX事務局スタッフに、本日の感想を楽しそうに語っていただきました)

─そのほかにもEDIX参加後に生徒に接するなかで感心したことや成長を感じたことはありましたか?

伏木:現場の教育者の方や、教育に携わる企業担当者と接することで、生徒たちの意識に変化があったと思います。教育現場が抱える課題を社会全体の課題として捉え、解決策にもさまざまなアプローチがあるのだと、発想がより柔軟になったのではないでしょうか。「教育とAIの接点を学校現場だけで考えなくてもいいのではないか?」という議論が生まれたのも、EDIXに参加したことによる大きな影響の1つだと思います。

一方で、これまで授業で探究してきたことと、EDIXで見聞きした実際の現場で起こっていることが繋がる瞬間もたくさんありました。これは生徒たちが学びの方向性に自信をもち、さらなる探究を進める力となったのではないでしょうか。


EDIXは「ICTの博物館」として生徒と教師が共生するきっかけになる

─EDIXには、多くの先生方から「児童・生徒を参加させたい、学ばせたい」という声をいただくのですが、そのような先生方にアドバイスや助言があればお願いします。

伏木:生徒が教育現場の人やICTを提供する企業の方と直接話をして、さまざまな技術に触れる体験をすることは、何物にも代えがたい貴重な機会になります。もちろん学校として、座学で知識を深めたり、ICTを活用しながらオンラインで情報収集をすることも大切です。しかし、最終的には現場で「生の体験」をすることが学びの質を大きく向上させると感じています。その意味でEDIXに参加したことは、生徒たちの学びにおいて凄くプラスに作用しているとお伝えしたいです。

また、我々大人の目線とは違う見方を持って帰ってくれる可能性があるという点もEDIXの面白さだと思います。大人は「こんなところを見て欲しい」と一方的に期待しますが、生徒たちはまったく違う形で発見し、学びます。まるで「ICTの博物館」で、大人とは異なる感覚にハッとさせられる経験は、結果として、自分たちの教育スタンスに新しい価値観を与えてくれるかもしれません。


また、教師と生徒と共生し、一緒に学校を作りあげていくための一つの突破口になる可能性がある、非常に意味のある場だと感じました。

─ありがとうございました。


EDIXとは
学校・教育機関、企業の人事・研修部門など教育に関わる方に向けた日本最大の展示会です。
年に2回、東京・関西で開催をしています。
 

来場に興味のある方は下記から詳細をご確認ください。